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首相官邸

 政府は、重要インフラへのサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御(ACD)」の導入に向けた法案の提出を、来年の通常国会に先送りする。年内に予定される臨時国会への提出も視野に入れていたが、衆院選で与党が過半数割れとなり政権基盤が弱体化。反発が予想されるACD法案よりも、経済対策や補正予算案を優先せざるを得なくなった。成立の道筋は不透明になっている。

 ACDは、政府が民間の通信事業者に提供させた通信データを分析して平時からネットワークを監視し、必要な場合には攻撃元のサーバーに侵入して無害化を目指す仕組み。憲法が定める「通信の秘密」の保護を一部制限するための法整備などが必要で、岸田文雄前政権は6月に通信や安全保障の専門家らからなる有識者会議を設置して議論を進めた。

 しかし岸田氏が8月に首相退陣を表明すると、有識者会議は開かれなくなり、秋にも示す見通しだった中間取りまとめに向けた議論は止まったままになっている。

 10月に就任した石破茂首相…

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